女性のカラダ

一灸先生に聞いてみました vol.37 顎関節症その1「過ぎたるは猶及ばざるが如し」

2017.10.12

こんにちは。今回はある50代女性のお悩みをご紹介します。数年前、急に顎に痛みを感じ、その痛みはどんどんひどくなって、口を開けなくなってしまったそうです。その後病院で「顎関節症」の診断を受けて痛み止めを飲んで以来、すっかり痛みはなくなったものの、今も顎にはカクカクとした違和感が残ったまま、とのこと。早速、顎関節症について一灸先生に聞いてみました。


水の巡りと顎の痛み
顎関節症は顎の骨が本来の位置からずれることで、痛みや噛み合わせの悪さが生じている状態です。カラオケの歌いすぎで顎関節症になる、という噂もあるようですが、直接的にはあまり関係ないでしょうね。ただ、カラオケを歌いながら冷たいビールやジュースなどを大量に飲んでいる場合は、無関係とは言えないと思います。なぜなら、顎関節症は体内の水の巡りと深い関わりがあるからです。
東洋医学では、顎関節の症状は、風(ふう)や寒(かん)の邪(じゃ)が体内に侵入したことが原因と考えられています。邪の主な侵入の経路はふた通り。異常気象や冷房などで風や寒の邪が侵入する場合と、水分の摂り過ぎや暴飲暴食、不摂生、過労などにより脾・胃の機能が低下して湿痰(しつたん)が生じ、風・寒の邪に侵される場合です。湿痰とは、津液(しんえき)が滞った状態、つまり体内の水分の循環がうまくいかなくなっている状態のこと。水分を全身に循環させる機能は脾・胃経が担っていますが、この機能が低下すると水の循環が停滞する湿痰が生じ、風・寒の邪に対する抵抗力が弱まって侵入を許してしまうのです。ですから顎関節症の人は、むくみに悩んでいる人も多いのではないでしょうか。もちろん体質には個人差があるので、過労や暴飲暴食、不摂生が必ずしも顎関節症として現れる訳ではありません。顎関節症として現れる人もいる、ということです。

口を開かないのは食べて欲しくないから?
また、少し難しい話ですが、手足の陽経という経絡の流れは、すべて頭部に繋がっていて、陽経が風や寒の邪に冒されると、顎、頬、口の筋肉が収縮して口を開けなくなる、という考え方が東洋医学には昔から存在します。当然ながら顎関節は骨格の一部ですからバランスも重要です。例えば頭蓋骨の微妙なずれでも、顎関節のずれにつながることはあります。頭部に繋がっている足の陽明経のうち、顎関節付近には下関(げかん)という胃経のツボがあり、胃の不調と顎関節の痛みは繋がっていることがわかります。痛みは身体からのSOSですから、もし顎が痛くて口が開かず、食事が出来なかったのなら、胃の機能が低下していて食べ物を受け付けていなかったのかもしれません。ずれているから痛いのに、痛み止めで痛みだけを取ってしまったので、ずれによるカクカクとした違和感だけが残っているのでしょう。出来れば鍼灸院に行って身体のバランスを整えてもらうことをおすすめします。何度もお話していることですが、一か所がずれるとバランスを取るために、その他の部分もずれてしまいます。
夜更かしや過労、どれかひとつだけなら顎関節症にはならなかったかも知れないけれど、たまたま同じタイミングで暴飲暴食してしまった、身体を冷やしてしまった、そんなことがきっかけで、身体にずれが生じ、SOSを発信していたのでしょう。


カラオケと顎関節症は関係なかったんですね。もし歌手の方が顎関節症になるとすれば、過労が原因ではないか、とのことでした。お悩み主の女性は、冷え、暴飲暴食、不摂生、過労など、顎関節症の原因に思い当たるところがあったでしょうか。次回は、セルフケアの方法だけでなく、つい忘れがちな基本中の基本の部分を聞いてみます。生活習慣を見直しつつ、少しだけお待ちください。

話 一灸先生(治療室一灸 院長 森川まこと)

文 金子未和

IMG_5120

一灸先生
治療室一灸 院長 森川まこと
鍼師、灸師、あん摩マッサージ指圧師、障害者スポーツ指導委員。鍼灸、マッサージのほか、操体術、ホメオパシーなどを用い、患者の状態や希望に合わせた治療を行う。地元はもとより遠方から通う患者さんも多く、「一灸先生」の愛称で親しまれている。