女性のカラダ

一灸先生に聞いてみました vol.29 女性特有の不調 その1 〜身体のシステム、再確認〜

2017.06.08

毎月2回に分けて、女性の身体のお悩みとセルフケアについて一灸先生に聞いてみていますが、みなさん、養生していますか? 今月のテーマは「女性特有の不調」。月経痛や月経不順、PMS(月経前症候群)、更年期障害など、まさに女性にしかわからないお悩みについて、一灸先生に聞いてみました。

知ってるつもりの女性のリズム

女性の身体には、男性にはない「妊娠・出産という特別な仕事を務める仕組み」がありますね。その仕組みの代表格が女性ホルモンの分泌です。まずは月経の流れについて確認しましょう。

  1. 卵胞刺激ホルモン(FSH)が卵胞の成長を促す
  2. 卵胞ホルモン(エストロゲン)が子宮内膜を厚くして、おりものの分泌量を増やすなど妊娠に備える
  3. 黄体化ホルモン(LH)が排卵を促進する
  4. 黄体ホルモン(プロゲステロン)が子宮内膜を柔らかくし、体温を上げ、乳腺の発育を促すなど、妊娠を維持するための身体づくりを行う
  5. 妊娠しなかったときはいずれのホルモンも減少して内膜が剥がれ落ち、経血として体外に排出される

これが一般的な月経の流れですね。女性の体内では毎月これだけの複雑な変化が起こっています。ホルモンの代謝や分泌量の調整は、あの多忙を極める肝臓の仕事。また、それぞれのホルモンの副作用から体調や心にも変化が起こり、それによって生じるストレスも肝臓に蓄積します。仕組みの複雑さや肝臓の負担を考えれば、ほんの小さなきっかけでこの流れのどこか一部が乱れてしまう事があったとしても、不思議ではありません。

一方、東洋医学では、月経とは月の満ち欠けと同様の周期で、古くなった血を排出し、新しい血を作って貯めている、という考え方です。月経に深く関わる臓腑は肝と腎。例えば、肝の蔵血(ぞうけつ:血を貯めたり、排出をコントロールする)作用がうまくいかなければ、月経が不順になってしまいます。また、腎が司る蔵精(ぞうせい)作用も重要です。精とは、少し難しいのですが、成長や生殖に必要なエネルギーのようなもの。腎は精を貯めたり、必要な場所に届けたりする、生殖には欠かせない働きをしています。

身体のサインをしっかりキャッチ

月経痛や月経不順、その他の不定愁訴など、女性特有の不調の原因としてまず考えられるのが、肝うっ血による気血のめぐり不足(代表的なものは瘀血)でしょう。肝うっ血により蔵血の働きが弱まり、気血の巡りが悪くなるのです。肝うっ血の主な原因は、ストレスや睡眠不足。生まれつき肝や腎の働きが弱かったり、他の臓腑の病が影響していることもあります。ストレスは肝の働きを鈍くしますし、睡眠不足は腎にとって大打撃です。

また、あまり一般的ではありませんが、私は脾も関係すると考えています。脾には五臓を温める働きがありますから、脾の力が弱ければ、その他の臓腑が冷えて、気血のめぐりも滞りやすくなるでしょう。他にも、食物から摂取した栄養分を貯めたり、全身に届けています。この働きこそが腎が司る「精」を作る、ということですから、やはり女性特有の不調と脾は切り離せません。少なくとも、この3つのどれかひとつでも滞れば、「女性特有の不調」が生じる可能性は十分にある、という訳です。

自分の身体の仕組みがなんとなく想像出来たでしょうか。月経痛やPMS、更年期障害という病名は、もともと東洋医学にはありません。検査の数値には表れない原因不明の不定愁訴に悩まされることの多い女性ですが、西洋医学で見ても東洋医学で見てもこれだけの器官が複雑に関わっていると考えれば、決して不思議なことではないのです。もちろん、だからと言って放っておいても良いということではありません。不調はすべて身体からのサインです。不定愁訴の段階でしっかりケアすれば、その先の大きな病気を防ぐことにもつながりますから。

こうして改めて聞いてみると、身近過ぎて知っているつもりになっていた自分の身体を、女性として見つめ直すいいきっかけになりますね。次回は、肝・腎・脾のケアの方法を聞いてみます。毎回登場する三陰交と関元をなぜベースのツボと呼ぶのか、その理由もきっとわかって来ます。どうぞお楽しみに。

話 一灸先生(治療室一灸 院長 森川まこと)

文 金子未和

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一灸先生
治療室一灸 院長 森川まこと
鍼師、灸師、あん摩マッサージ指圧師、障害者スポーツ指導委員。鍼灸、マッサージのほか、操体法、ホメオパシーなどを用い、患者の状態や希望に合わせた治療を行う。地元はもとより遠方から通う患者さんも多く、「一灸先生」の愛称で親しまれている。

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